石橋潔はドイツ語を教えていた有閑夫人の宇佐美夫人との関係を清算し、自力で生活しようと、地方新聞である横浜タイムス社に入社した。ある日、社の先輩津田に喫茶店“朱印船"に連れていかれた。ウェイトレスの千江の清潔なたたずまいに強くひかれた。潔は足繁く“朱印船"に通うようになった。千江目当てに通ってくる客には、木村というブルジョア青年もいた。ある雨の朝、潔は街で千江に会った。二人の間は急速に深まっていった。潔は千江と結婚したいと、先輩の津田に相談した。千江から電話があった。競輪場のスタンドから父が落ちて入院したというのだ。翌日、潔は宇佐美夫人の許を訪れた。金を借りるためだ。夫人はしぶしぶ一万円の小切手を手渡した。潔は急に大阪に出張することになり、千江にも会えず出発した。その留守中に、千江は木村と結婚してしまった。が、この結婚には木村の父親が反対しており、千江...
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