ピンクで次々と秀作を連発している、気鋭の監督・榎本敏郎が、初めてゲイ映画に挑んだ意欲作である。 ノンケの兄貴分に恋をしているチンピラヤクザ。つい、眠っている、そんな兄貴の股間に手を伸ばしたりして、ボコボコにされたりしている、ま、いわゆる落ちこぼれのチンピラである。 そんなある日、兄貴分が、ちょっとした手違いから組の幹部を殺してしまう。これがバレちまったら、俺たちがバラされちまう…。兄貴の命令で死体を隠しに、人里離れた山中にある廃屋に死体を運び込んで、ほとぼりが冷めるまでそこにいようということになったのだが、そこに、不況で会社を倒産させてしまった中年男が、自殺場所を求めて、その廃屋にやってきてしまい、事態は予期せぬ展開になっていき…。 チンピラヤクザに扮するのは、ゲイ映画初出演の石川裕二。ちょっとワイルドな感じのする顔立ちと、鍛え上げられたボディがもの凄くそそられる。次の出演作が待ちきれない、という感じか。 ちょっとワルの兄貴分に扮するのが、川瀬陽太。そう、名作『思いはあなただけ』の1と2で、常にゲイに惚れられて事件に巻き込まれていく私立探偵を好演した彼が、今作でもいい味で画面を締めている。川瀬もワイルド感が堪らない。 この荒々しい、危険な香りがするような主役のゲイ映画というのはとても珍しく、とても新鮮である。それだけに、絡みなどもちょっと今までと違う感じで見れて、こちらも新鮮。意外なところでヌケるかも。やんちゃボーイフェチの方にとっては堪らないだろう。少々、人生に、社会に外れた「迷走者たち」が繰り広げる、猥雑なるドラマ。案外あなたも、色んなところで共感できるかもしれない。
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