江戸で人気の踊り師匠おせんは、その妖艶さと男嫌いが売りものだった。その舞姿を舞台の袖でおせんの弟直吉が見守っていた。この直吉の財布をスッた宗次郎ははずみで直吉を刺し大川へ突き落してしまった。追われる身となった宗次郎はおせんの家に逃げ込むが、折悪く師匠の金方で執拗に言いよる越後屋が訪れ、宗次郎とおせんの仲を誤解して帰る。それ以来、宗次郎は男を知らぬおせんの豊満な肉体に食いいる一方、踊りのけいこに通う越後屋の娘お吉を狙うのだった。燃えあがったおせんは踊りのけいこも休み宗次郎と遊び歩く日が重なった。そんなおせんに越後屋は憎さの余り、おせんの美しい顔をつぶしてしまうよう悪党の仁蔵に頼んだ。仁蔵はおせんの顔に茶釜の煮え湯を浴びせた。その日を境に、宗次郎はおせんが寝たままなのをよいことに金品を持ち出してはお吉との逢瀬を重ねていた。ある日、宗次郎は直吉がおせんの弟で、しかも生きていることを知って一刻も早くおせんから離れようとした。女の本能でそれと察知したおせんは必死に引き止めようとするうち、宗次郎に突きとばされ薪割りの上に倒れた。おせんのタダれた醜怪な顔からはどす黒い血が吹き出し物凄い形相だった。おせんは、己の変り果てた顔をみて愕然となり身を三味線堀に投げた。宗次郎と仁蔵はおせんに煮え湯を浴びせた件で越後屋に乗り込み金をおどしとろうとするが、逆に越後屋は仁蔵に宗次郎殺しを引受けさせた。だが、仁蔵はついにおせんの怨霊にとりつかれ越後屋を刺殺、悪事の一切を直吉につげた。一方、お吉を連れ出した宗次郎は怨霊から逃れようと狂気の如く短刀をふり回している所へ、仁藤もまた怨霊から逃れ走って来た。二人は争ううちに、三味線堀のよどみの中に引き込まれていくのだった。
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