山田洋次が監督デヴューを飾った、シスター・ピクチャーと呼ばれる低予算中編映画の一編。もとは推理小説だった多岐川恭の同名小説をコメディとして映画化。その新人離れした堅実な演出ぶりは、高く評価された。 新築した家の二階を、借金返済のため若い夫婦(平尾昌章,関千恵子)に間貸しするサラリーマン夫妻(小坂一也、葵京子)だが、家賃を滞納気味な下宿人の行動が腑に落ちない。ふたりをなかなか追い出せないでいる夫だが、ある日彼の母親(高橋とよ)が上京し、投宿している間に二階の住民と仲良くなってしまう。 小坂一也の不器用で情けないサラリーマンが同情を誘う。本作ではその情けないサラリーマンを試すかのように、様々な試練が続発する。後年の山田作品に見られる、主人公を試すかのような加虐性が早くも現れている。上映時間56分という尺ながら、きっちりと計算された無駄のない演出は確かに堅実と評されるにふさわしいが、新人らしい弾けたところがないあたりは物足りなさを感じる。この点は山田も後年反省したようだが、その堅実さこそが山田洋次の作家性を牽引したのもまた事実。(斉藤守彦)
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