大日本探偵社社員、南条康介は仕事におい廻されて恋人の草野綾子とデイトも出来ない有様を嘆いていた。綾子は康介の下宿先、古い暖簾を誇る浅草の煎餅屋「入河」の看板娘であった。「入河」は綾子の姉秀子の実権下にあり、夫の雄之助は康介にこの家に代々続く婿養子の宿命を説いて慰めた。安月給の康介は秀子に反対されて綾子と結婚出来なかった。お茶漬や「ひさご」では大学教授の土屋信行と大日本探偵社社長赤沢俊哉が飲んでいた。「ひさご」のマダムは昔土屋とロマンスを語った伊丹夏代である。店の奥では新聞記者の辰巳次郎が飲んでいた。テレビ・プロデューサーの恋人小池さわ子はいくら待っても現われなかった。いつもデイトをすっぽかすのはリハーサルのためだった。康介や次郎と仲間の高見明は登山を生きがいとする山男だった。妻の弓枝は勿論大いに不満であった。高見家の下宿人、城山茂夫は音楽学校の生徒である。今夜はグループが集った。「ひさご」の一人娘百合子、土屋の一人息子信彦、パン屋の娘八坂いづみ等である。その頃「入河」では夜業で康介が煎餅用の粉をひいて点数を稼いでいた。そこへ雄之助が長崎から家出した宗方秋子という少女を連れて来た。「入河」で女中代りに使うことになった。翌朝、康介が出勤すると探偵社は大騒ぎだった。三十万の賞金つきで依頼主の名も素性もいえぬ一人の少女をみつけるという仕事が康介を待っていた。新聞社に次郎を訪ねて共同戦線をはった康介は、まず家出娘をさがせという次郎の言葉にはっとした。さがすべき少女は昨夜の宗方秋子だった。秋子は城山たち若いグループの仲間になり、「入河」を出て高見家の女中になっていた。それを知らぬ康介に次郎、綾子も加わって必死に秋子を捜した。赤沢俊哉の家は赤沢病院、即ち美智子夫人は女医である。病院を訪れた次郎はそこで黒衣の老婆の姿にブンヤのカンが働いたが失敗してしまった。若いグループはハイキングに出かけた。信彦と秋子は親しさを増したが、秋子は自分が門跡尼になる身であることを悲しそうに信彦に打ち明けた。高見家では弓枝のご機嫌が悪かった。高見が土屋教授の率いる南極探検隊に参加したからである。高見は庭にテントを張り、二人は別居した。秋子が人間世界の自由に憧れて寺をとび出したことは皆の同情をひいた。赤沢は康介に三十万円の特別賞与を出したが、康介はほしくなかった。祭りの日、秋子はハッピ姿で皆といっしょに御輿をかついだ。その日の夕方、みなに見送られて秋子は元気よく帰って行った。康介と綾子、次郎とさわ子の幸せもまた近かった。
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