紙芝居屋の阿弥子は、今日も新開地の陽当たりのよいところで、得意の歌とおどりを見せて、子供たちの人気をさらっていた。けれど同業の五万助と新兵衛に河原へ追われ、そこで、お金にならない浮浪児のために、紙芝居を見せてやりながら明坊のことを思い出していた。明坊は阿弥子と恋人謙作との子供だが、謙作がもとの恋人と結婚したため、その家庭へ引きとられている。そしていまは足をいためて病院にいた。阿弥子はその病院の傍で、お面をかぶって紙芝居をした。明坊は面白がってそれを見たが謙作にはそれが阿弥子であることが判った。足が大分よくなって明坊が温泉へ行くことになり、阿弥子は明坊の今のお母さんのママさんからたのまれてつきそって行った。阿弥子にとってうれしい日々だった。紙芝居をやめて按摩になっていた新兵衛にも出会った。新兵衛は明坊をかわいがった。けれどママさんが迎えに来たとき明坊はうれしさのあまり、渡れなかったつり橋を渡ってしまったほどだった。阿弥子は淋しかった。明坊はママさんの許へ阿弥子はまた紙芝居屋さんの生活がはじまった。阿弥子が幼稚園の先生をしていると信じている明坊は、自転車にのってその幼稚園を探しに行った。幼稚園はなくて、そこにいたお面をかぶった紙芝居屋の小母さんが、幼稚園は遠くへ引っ越してしまったと明坊に教えてくれたのだった。
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