東京蔵前の大証券会社佐久間の二男信二は、母とみ子や兄浩一夫婦に某家の令嬢との縁談をすすめられていたが、彼はあるビヤホールのサービスガール圭子と愛し合っているのだった。もちろん二人はまだそれを打ち明け合っていなかったが、川開きビール祭の宵、信二が、ライバル牧とビールのガブ飲み競争をやって見事に勝ったとき、酔いにまかせて胸の中を打ち明けた。圭子もよろこんでそれをうけいれたことはもちろんである。しかし酔いつぶれてその夜圭子の家へ泊めてもらった。圭子は女剣劇一座の楽屋番をしている父三吉と鍼灸師内山の家に間借りしていた。内山の娘春江は人気歌手だったが、佐久間証券会社社長秘書の青木は春江に恋をして、せっせとお灸に通っていた。こうした事が信二の母とみ子の雇った秘密探偵によって報告されたので、おどろいたとみ子は早速実状調査のため圭子をビヤホールにたずね、すっかり彼女が気に入ってしまう。しかし探偵の調査は、圭子の父が、三十数年前とみ子を捨てて逃げた恋人だったことまで調べあげたので、この縁談は破談になりそうになった。しかし、久しぶりで再会した三吉ととみ子が話し合った結果、三吉の三十年前の失そうは、お互いの誤解から生まれたことだったのがわかって、二人はかえらぬ昔を嘆き合った。かくして、若い信二と圭子は、親たちの失敗をくりかえすことなく結ばれたのだった。
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