夜の瀬戸内海をゆく一隻の汽船。甲板に立つ女、石井光子は体の中の小さい生命ごと死ぬ覚悟をしていた。船の中で知り合った親切な青年紳士保科忠一と妻の妙子は不幸な彼女を励ました。保科夫妻はアメリカで知り合って結婚し、近く生れる子供共々故郷に帰るところだった。一瞬、運命のイタズラで光子の人生は変った。船が衝突事故を起したのである。保科は死に、妙子も死んだ。しかも、事故の直前、いたずらに光子の薬指に自分の指輪をはめさせたまま……。光子は保科妙子として病院で意識をとり戻した。そして子供は生れていた。男の子だった。見舞に訪れた義弟の則男も兄の妻として疑わなかった。四国の保科家では両親の忠則とすみのが喜んで光子を迎えた。初孫は忠男と名附けられた。光子の良心は痛んだ。保科家の遺産相続が弁護士を介して行われた。光子は過分な配分を得た。則男はやがて光子を愛した。二人が結ばれることを、周囲の人はむしろ当然と思った。罪の意識におびえる光子は秘かに私立探偵を訪ねたが、数日後則男からも紹介されて驚いた。かつて光子を棄てた昔の男中西が光子の前に姿を現わした。悪竦な手段で脅迫した中西は、ついに光子を呼び出し婚姻届に無理矢理捺印させた。光子の憎悪はつのった。深夜保科家から拳銃を持ち出して光子は中西のアパートを訪れた。しかし中西はすでに殺されていた。則男が入って来た。驚く光子に則男は打ち明けた。則男は、光子が妙子でないことも、中西との関係も知悉していた。二人は中西の死体を運び出し、鉄道線路に投じた。中西を殺したのは誰だったろうか。この事件と前後して光子を実の娘のように愛したすみのが持病が悪化して死んだ。光子に宛てたその遺書の中で、すみのは彼女こそ中西を殺したことを告げていた。
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